秀光人形工房 (ひな人形、五月人形、日本人形)

正和工芸社長 佐藤正三郎師

大木雛道具の最大の産地として知られる駿河雛具。今では静岡県の伝統工芸として全国に出荷されています。その中でも、古くから新素材を活かしアイデアマンとしても知られる正和工芸社長 佐藤正三郎師。小物の木工加工を得意とする「指物師」として、輸出をおもなルートとするキッチンラック等を製造していたそうです。

数十年前のドルショックの関係で政府認定の転換企業としてバックアップを受け、その類まれなる技術を生かして雛小物を製作するようになりました。 抜きん出た技術を頼られて、その後扱い品目が増え続け、今では雛道具全般を製造するようになりました。仕事に対する情熱がにじむその語り口には、絶え間ざる研鑚と修錬の結果生まれた製品に対する自信と誇りが表れています。

指物師による黒塗りされたお道具の金蒔絵作業です。微妙な力加減が出来る様に改良・工夫された機械を用いて、金の蒔絵を全体に施します。この機械は最先端の技術を採用した紙製品用の熱版ラバー刻印機を、さらに独自のアイデアと技術で改良し、業界唯一の本金箔加工機械を使用しております。全て手作業の製品とは違い、純度の高い本金を使用できる為長年の変色や色あせ、かすれが無く、形状や温度、材料の影響を受けにくく、本金箔ののりも大変良くなっています。まさに箔押しの技術の特徴を生かした理想的な技術です。

下道具の柄入れから始まったこの技術も、今では全ての部分に応用出来るようになりました。大小様々な形や大きさに対応する為、この本金箔押しの型も500以上の種類になっています。決して平ら同士ではない部分に、均等に、しかも押さえる力によって金箔の柄の表情が変わってしまうという難条件を、かなりの失敗と試行錯誤を繰り返しながら克服してまいりました。上下の型を合わせたり、湾曲している部分を噛み合わせるには大変なアイデアと努力が要りました。

全体に箔押し蒔絵を施した後に、さらに盛上げ本金蒔絵作業を加えます。手作業で型を張り、その上から丁寧に本金箔を張るための塗料を塗り込みます。この上に本金箔を張り、盛り上がった部分を整えます。部分や仕様によって大きさや絵柄を張り分けます。

エアーブラシを使ってぼかしの背景画を入れます。後ろの部分から前の方に向かって、何回もに分けながらぼかしていきます。型を使って入れる部分もありますが、ぼかしはそのほとんどの作業をフリーハンドで入れていきます。自然な風合いが出る反面、蒔絵師の技量も見えてしまう所ですので、慎重にかつ大胆に描き上げていきます。

それぞれ小さな部品にも蒔絵を入れた後に、組み上げ作業に入ります。細かい部品の組み合わせで色々な仕様になりますので、細心の注意を払って組み上げます。最近ではカラフルな物や淡い色を使った物なども多く、黒一辺倒でも無くなってきているようです。
組み上げは全て手作業によって行われます。牛さんを付けるのも、装飾の為の紐を付けるのも、全て手作業のよって組み上げられているのです。ゆがみや不良が無いかどうかチェックしながら作業をします。

出来あがった製品を一つずつ検品しながら箱詰めしていきます。1日当たり、七段飾り用のお道具セットで40〜50セットくらいしか出来あがりません。しかし、全てを自社内で生産・管理していますので、細かい受注や仕様にも対応出来、静岡を始め全国にひな道具を出荷しています。