秀光人形工房 (ひな人形、五月人形、日本人形)

羽子板のさか田 工房紹介

商標名『一好』を掲げ、全てのパーツを国内自社工場で造り上げる昔ながらの職人工房。 代表者でもある坂田宗觀(そうかん)師(59歳)が率いるこの羽子板工房は、自社内、各協力工房を含めて一年中フル稼働しているほどの盛況振りです。

宗觀師は斬新な発想と先を見据えた開発能力にたけ、今までの伝統を鑑みつつ新たな羽子板像を確立、新素材や異なる産業の技術をも取り込んでニーズに合った羽子板を開発し、新たな市場需要をも開拓しています。 『江戸押絵羽子板』の標準的なパーツ数40〜60点をはるかに超える80〜120点のパーツをふんだんに使い、より立体的な豪華な羽子板造りに宗觀師の真骨頂が表れます。 20数年間に『友禅』シリーズでその地位を不動の物とし、その後『金彩』シリーズ『振袖』シリーズと立て続けにヒット商品を開発。東京浅草の浅草寺で毎年行われる『羽子板市』では、『振袖』シリーズが爆発的なブームを巻き起こしていました。今では『振袖』に続き『友禅鹿の子』シリーズまでもが大ヒットしています。 また、面相師 鈴木創博(そうはく)師(46歳)を筆頭としたデザイナー、若手技術者による活躍も『一好』工房の特徴でしょう。宗觀師との二人三脚でヒット作を発表し続ける創博師は、東京芸術大学在学中から宗觀師に見出されて面相描きの修行に入りました。もともと似顔絵を得意としていたその画力で、現代の美人画の新境地を切り開いてきました。常に8種類以上の美人画を描き分け、羽子板界をリードし続けています。 目が詰まっていて羽子板には最適と言われる『会津桐』のみを使い、伝統の技術『江戸押絵』一筋にかける、こだわりの羽子板工房です。

デザイナー紹介

一好工房のデザイナー主任の関根美幸師。女性ならではの観点で数々のヒット作をサポートしています。反物から生み出される素敵な芸術品である羽子板を目指し、日々製作と新商品開発にいそしんでいる。

常に新しい仲間が集まり、業界をリードし続ける一好工房の中にあって、関根師の知恵と経験は重要だ。現在は『正絹鹿の子絞り』シリーズの製作に追われている。「斑点が鹿の子供の文様のような所から付いたのが『鹿の子』と言う名前なんですよ。」「『鹿の子』シリーズは通常よりも数倍手間がかかるんです。少ない所でも必ず二重に包まなければならないし、さらにもう一度柄行を見直しながら包まなければならないし、職人さんたちには手間がかかりすぎでちょっと申し訳ないですね。」妥協をしないその姿勢が、一好工房の全員に根付いているようです。

大きさや仕様、飾り方や全体の雰囲気に合わせて、たくさんの反物や部品の中から使用する物を決め、それらに合った制作方法を決めます。羽子板の場合は柄が出る部分が限られている為、通常の見立て方では出来上がりが全然違うものになってしまいます。この時点でかなり気を使う作業になります。

小さな部品から造っていきます。型取った厚紙に布を張り、綿を入れてくるみます。使う場所によって綿の入れ方や量を調整し、場合によっては二重にくるんだり何層も段違いにくるんだりします。糊とボンドをその日の天候や湿度などによって細かく調合し、最後にコテで抑えてくるみます。この小さな部品が80ケ以上集まって出来上がるのが押絵羽子板なのです。

小さな部品を重ね合わせたり繋ぎ合わせたりして大きな部品に仕立て上げていきます。より立体に、より豪華になるように『仕様書』に照らしながら仕上げます。3Dの立体パズルの要領と言えばわかりやすいでしょうか?しかし、小さな部品の一つ一つがすでに立体型なので、この繋ぎ合わせによって隙間が出来ないように微細に設計されているのが特徴です。きめの細かい、地道な作業が求められる工程です。

お顔を描きます。羽子板のお顔もきちんと押絵になっています。厚紙などの台紙に綿でくるんだ布を薄く張り、その布地の上から筆でお顔を描き込んでいきます。筆の入り方や引き方、色の使い方など、その描き手によっても特徴がはっきり出ます。その後髪付けをしてかんざしを挿します。

別々に製作されたお顔と体の部分を繋ぎ合わせます。体の中心線にあわせてバランスよく繋ぎます。仕様や卸先の発注の仕様に合わせて組み合わせていきます。その後全体のバランスを見ながらチェックしていきます。

踊りの銘柄や仕様によって部品を付けていきます。持ち物や髪飾りには多種多様な種類がありますので、その踊りの銘柄や地方独自の特徴などを考慮しながら仕上げていきます。手に持つ物やその手自体にもいくつかの種類があります。最近では飾り紐や振袖のたもとなど、手にかける物もより立体的に迫力あるものが好まれているようです。

会津より取り寄せた桐の木を使い、裏側に筆で絵を書きます。あらかじめ木工屋さんで羽子板型に切ってもらい、十分乾燥させておきます。絵柄は縁起の良い絵柄が多く、松竹梅が基本になっているものが多いようです。

板自体の裏描きが終わったら「にぎり」の部分に布を巻きます。人が持ってもずれないようにしっかりと貼り合わせます。均等な力加減を保ちながら丁寧に仕上げます。

木を小さく刻み、押絵の裏に貼ります。立体的に浮かす量に沿って木辺を使い、より迫力を醸し出します。押絵を羽子板に留め、外れないようにしっかりと打ち付けます。

出来上がった羽子板に装飾品を取り付け、最後の仕上げを施した後に全体を検品いたします。同じように見えても全ての羽子板は仕様や柄行が異なり、その一つ一つの羽子板がさながら生きているかのように優雅に華やいでいます。体の一部だけの表現とは言え、良い羽子板はまるで動いているかのような錯覚にまでとらわれます。