鎌倉時代の頃から古く伝えられた羽子板ですが、現代のように装飾品として確立されていったのは江戸時代以降とされています。太平な世になり、広く神事や五節句の行事が行われていったのも要因とされています。 新年を迎える大事な行事として定着した羽子板飾りに、蒔絵や古粉といった技法を用いて美しい装飾専用の羽子板が作れらていきました。その中でもとりわけ江戸の庶民に受け入れられていったのが押絵羽子板です。
中国から伝わった技法で厚紙に布を張り、綿を入れて立体感を持たせたもので、当時の浮世絵の流行と重なり庶民の間で熱狂的にもてはやされ、歌舞伎の人気役者や、浮世絵の美人画など押絵羽子板の全盛を極めました。 今日の押絵羽子板はその押絵羽子板技法が受け継がれて来た物で、美しい羽子板は初春の縁起物として、また、高尚な贈り物として今なお喜ばれています。
【ゆかしき伝統の品 江戸押絵羽子板】
江戸押絵羽子板は、伝統的な原材料を用い、昔ながらの技術、技法、手作り等の条件を満たし、厳格な検査に合格した東京都知事指定の伝統工芸品です。 小さな一つ一つのピースを積み重ねて造り上げるまさに根気のいる作業の連続で出来上がる押絵の一枚一枚は、広く幸せと魔除けとしての能力を信じて造る職人の技と経験の賜物です。 どうぞ末永くご鑑賞、ご愛好下さいますようお願い申し上げます。
型を取った厚紙に綿をのせ、それを布でくるみます。大きさや形によって綿の量や詰め方を考えながら包み、その上から金襴や鹿の子生地等でくるみます。
小さな各部分を組み合わせて大きな体の部分を作ります。別に造った顔や髪の毛、かんざし等の小物を付けます。
羽子板型に切った桐の板に、出来上がった体を取り付けます。踊りや仕様によって小物部品が異なりますので、細かくチェックを入れて完成です。